アセチレンガス(C2H2)

●無色、エーテル臭、無毒のガスです。
●アセチレンは非常に不安定な物質であり、加圧下ではわずかな刺激で分解爆発を起こすため、圧縮ガスまたは液化ガスとして容器に充填できません(溶解アセチレンとして充填)
●銅、銀、水銀等と化合して爆発性化合物を生成するので、Cu62%以上の銅合金は使用できません。
●切断ガスのうち、最も高い火炎温度(3330℃)になります。
●空気より軽い(比重0.906)ガスです。
●可燃性であり、爆発範囲の広い(空気中2.5〜100%)ガスです。
●可燃性
●爆発範囲/2.5〜100%(空気中)
●容器塗色/褐色
溶解アセチレンの特性
アセチレンガスは、酸素等の助燃性物質がなくても、加圧下では自己分解を起こして多量の熱を発生する活性に富んだガスですが、工業的には、アセトンまたはDMF(ジメチルフォルムアミド)を浸透させた多孔質の固形マスを詰めた容器に圧縮され、充填されています。仮に気相で分解爆発が起こっても、「溶解」された液相のガスにまでは伝わらないという、極めて高い安全性を確保した状態で流通・消費されています。
溶解アセチレンはカーバイド法で製造
アセチレンガスの製法としては、石油から製造する蓄熱炉式熱分解法や、天然ガスを原料とする部分燃焼法、さらに完全燃焼法や電弧法等がありますが、「溶解アセチレン」はすべてカーバイド法によって生産されています。カーバイド法とは、基本的には「アセチレンランプ」と同じ原理のものを工業的に確立したものです。


切断・加熱分野で活躍
歴史的には、明治後期に欧州よりガス切断技術が導入されて以来、アセチレンガスはわが国産業の発展に大きく寄与してきました。金属切断・加工の歴史はまさにアセチレンガスとともにありました。1950年頃から生産量は増加を続け、1970年には年間約6.4万トンが生産されていました。しかし、大型容器がなく運送効率が悪いことから遠隔地配送に適さないこと、同様に、多量供給面に若干不便なことから大口需要家で代替ガス転換が進んだこと、金属加工分野においてプラズマ加工やレーザー加工等への技術変革が進んだこと等により、現在では生産量は年間約2万トンとなっています。

大量消費型の需要家においては、アセチレンガスの代替ガスとして、メタンガスやプロパンガス、エチレンガスといった石油系ガスが使用されるようになりましたが、アセチレンガスはそれらに比べ、火炎温度が3,330℃と最も高いという特徴があります。また、アセチレンガスの火炎は他の石油系ガスに比べ最も火炎の集中性が良く、高温で最小限のガスを切断個所に集中できるという最も効率の良い切断用ガスであり、この特徴を生かした主な用途として、切断・圧接・焼き入れ・溶射・ろう付等の金属加工があります。また、原子吸光分析用燃焼ガスとして分析に使用されたり、レッペ反応を用いた化学製品の反応原料として使用されています。今後、さらに、その特性を生かした活用が期待されています。
産業ガス